長沼商事(埼玉県)新工場オープン間近、環境共生型モデル工場目指す
今年5月に法人化50周年を迎える長沼商事(株)(長沼正夫社長、埼玉県所沢市林1-306-7所沢三ヶ島工業団地、電話042-947-8870)は、このほど所沢三ヶ島工業団地内に新工場を建設した。新工場にはすでに1000トンギロチンシャー、小型破砕機、天井クレーンなどの設置を終えており、目下4月1日のオープンに向けて急ピッチで業務移転作業を進めている。5月頃までにはシュレッダーを導入、稼動させる予定だ。最終的に新工場は、月間5〜6千トンの処理能力を有する工場となる。また今年中に産業廃棄物中間処理の認可とISO14001認証の取得を計画しており、環境対策に積極的に取り組んでいく方針で、環境共生型スクラップ工場としての「モデル工場」を目指す。長沼正夫社長に新工場の概要、今後の事業展開等について聞いた。
新工場、4月1日オープン法人化50周年、新たな事業展開目指す
同社は昭和12年の創業以来64年間、埼玉県所沢市を拠点に鉄スクラップ業を営んできた関東地区でも老舗の鉄スクラップ業者の1つ。昭和26年には株式会社へ法人改組(同29年、現社名へ商号変更)し、今年5月で法人化50周年を迎える。 その節目の年に建設された同社新工場の敷地面積は1,650坪。すでに鉄スクラップ工場、非鉄スクラップ工場、事務所棟、休憩施設が建設され、処理加工機械の設置も終えた。これまで仮設ヤードでの操業を続けてきたが、4月1日のオープンを前にスクラップ仕分けボックスの設置や加工処理機の試運転など、移転作業は最終段階にはいっている。 同社が工場の移転を決めたのは、15年ほど前のこと。旧工場周辺でマンション建設などが進んだために、加工処理作業の継続が困難になってきたためだ。そこで同社は市内で建設が進められてきた所沢三ヶ島工業団地への移転を決めた。 同工業団地は埼玉県と東京都との県堺、狭山丘稜のちょぅど北側にあり、周辺には茶畑が広がる。同工業団地はこうした地域環境に配慮し、建蔽率を60%に抑え、各区画とも20%の緑地を設けるなど「環境共生型工業団地」として計画された新しい工業団地だ。 旧工場は市街地の中心に位置していたことから、交通利便性に優れた場所だった。移転を決めた後、大手スーパー各社が旧工場跡地の使用を求めて殺到するほど立地条件は良かった。そのため同社は旧工場跡地にスーパーの店舗、駐車場を建設。長期賃貸契約で国内有数の大手スーパーに貸し出している。 しかし新工場も、国道463号線、国道16号線、圏央道入間インターチェンジから車で約5分の距離にあり、立地条件は申し分ない。また、所沢はもちろん、入間、川越にも近いことも移転先として選んだ理由の1つだ。 また工業団地内の道幅は9mで、工場周辺を取り囲んでいる。その上、団地内は交差点を作らず、入荷便、出荷便がそれぞれのルートを通行する設計となっており、スムーズな入出荷が出来るよう工夫してある。
1000トンギロチンシャー 4.8トン天井クレーンを導入
同社が鉄スクラップ加工処理のパートナーに選んだのは「SPS1000トンダブルクランプシャー」だ。同機はスクラップ加工処理機メーカー稲垣製作所が初めて手掛けた切断圧力1000トン、200馬力の大型ギロチンシャー。同機が第1号機となるため、これまで同社が蓄積してきたノウハウに加え、長沼社長の要望も多く取り入れられた。 長沼社長が特に要望したのは「処理速度」。試運転を終えた後の長沼社長の感想は「満足のいく速さ」とのこと。また、「稲垣製作所は故障の少ない、いい機械を造る」と絶対の信頼を寄せている。また同機が低振動、低騒音設計となっていることも決め手となった。 同社の鉄スクラップ工場は、高さ2mまでを厚さ20cmのコンクリート側壁で覆い、その上に厚さ10cmの防音側壁材を使用して、騒音対策を図っている。これに低騒音、低振動設計のギロチンを導入することで、さらなる防音効果を狙ったものだ。処理能力の向上だけでなく、防音対策の向上も視野に入れた設備導入だった。 同機の仕様は、型式・SPS1000トンダブルクランプシャー、投入ボックス寸法は、幅2000mm、奥行き9200mm、高さ1100mmとなっている。 また工場内の荷役作業は、京和工業製の4.8トン天井走行クレーン(2基)を使用する。1号基は直径1500mm、2号基は直径1700mmのリフマグが取り付けられている。両基とも巻き上げ速度30m/分、横行速度45m/分、走行速度70m/分となっている。 運転室の前面シールドは前面勾配タイプを採用してあり、見通しが良く、工場内全体が見渡せることで作業性を高める工夫を施したレイアウトにしてある。工場内は、加工処理ヤード、原材料仕分けボックス、出荷ヤードが高さ約4mの仕切りで区切られているため、天井走行クレーンでの荷役が最も効率的な方法だ。 新工場ではその他、事務所棟前の60トン台貫、小型破砕機などが新たに導入された。またオープンまでに仮設ヤードで使用されてきたプレス機(稲垣製作所製、75馬力)を移設する作業もすすめられている。 また5月をめどに、シュレッダーを導入、稼動させる予定だ。新工場奥にはシュレッダー棟がすでに建設されている。破砕された鉄スクラップ、ダストは、同棟隣の鉄スクラップ工場に送られるよう設計されており、スクラップ仕分けボックスの設置作業が進んでいる。 これら全ての加工処理機械が本稼動を始めれば、同工場の鉄スクラッブ処理能力は月間5〜6千トンに達する見込み。しかし扱いのボリュームだけを追いかけるつもりは無いという。環境に十分配慮するうえでも適正な利幅を確保する必要がある−と長沼社長は話す。
中間処理・ISO、年内取得へ
15年前頃から考えていたとしても「この時期に設備投資を?」といった疑問に、「こんな時代だからこそ」と長沼社長は意に介さない。 国内鉄すくらっぷ市況は1万円割れが続き、現時点の相場も昨年末からの下げ環境が未だ後を引いている状況。一方、最終処分場の逼迫からダスト処分費は高騰しヤード経営を圧迫している。その上環境規制は増々厳しくなっている。 こうした経営環境をとりまく背景を踏まえて、同社は産廃中間処理の認可を6月頃に取得する予定だ。同社のある所沢市での中間処理の資格認定は、市議会に設けられた認定委員会での認定が必要だ。委員会の賛同が得られない場合は、市議会にかけられる。それだけに厳しい認定基準をクリアすることは、同社の信頼性を高めることになろう。 また同社は昨年10月にISO14001認証取得に向けてキックオフした。今年中に認証を取得する予定で、環境基本方針の策定などの準備作業を進めている。ISO14001認証取得は、社内に環境対策への取り組みが継続的に行われる体制を作り上げていることを示すものであり、対外的に同社の信頼性を高める有効な手段と言える。 これらの資格を取得する上で、新工場への移転は大きくプラスになるだろう。「こんな時代だからこそ、環境に配慮したヤード建設、ヤード運営が必要なのだ」といった同社の意図が汲み取れる。同社が目指すのは「環境共生型鉄スクラップヤードのモデル工場」。次の50年に向けての第一歩は確実に踏み出された。
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