稲垣製作所 ダブルクランプシャー(T640新型ギロチン)
吉田商店で稼動
スクラッブ加工処理は鉄が鉄を切ることになるのでどちらかが、加圧下で動いたら切断出来ない。したがって、材料を確実にホールドすることが重視される。稲垣製作所の得意分野である油圧ポンプを上手に組合せたダブルクランプ方式は、この一つの成果といえよう。長い間ギロチンを持たなかった吉田商店の選択は正解といえよう。
クランプ効果で切れ味最高
九十九里海岸沿いの千葉県北東部のスクラップディーラー(有)吉田商店=千葉県匝瑳郡野栄町野手9086番地、吉田清社長は、このほど、ギロチンシャーを新設、4月中旬から本格稼動体制に入った。同社がこのたび導入した処理機は、高度な油圧技術ときめ細かな仕上げで評価の高い稲垣製作所製「ダブルクランプシャー」SPSシリーズの新バージョンとなる640T型。 同機はミドルクラスのギロチンシャーとして、人気を呼んでいる機種で、平成7年の発売開始以来、これまでに4台が稼動しており今回の640T型が5台目になる。この野栄町は千葉県北東部にあって近くを国道126号線と296号線が通っている。126号線を北東へ走ると銚子、南西へ走ると東金、茂原を通って房総半島へつながる。296号線を北西へ走ると成田になる。稲垣製作所製のSPSダブルクランプシャー640T型は、見事なプルシャンブルーに塗上げられ、力強くスクラップを切断しているが、太平洋の潮風に耐えるように、入念なサビ止め下地塗りを施し、仕上げも防錆効果に優れた専用塗料でペイントされている。このSPS640T新型の機械仕様は、高さ5100、幅5000、長さ11100各ミリ。材料投入ボックスは、通常仕様6000ミリであるが、今回は8000ミリとなっている。幅は900、長さは1800各ミリになる。切断能力は640トン、クランプシリンダー能力は第一クランプ95トン、第二クランプ135トン、サイドプレスシリンダー能力は78トンに達する。モーターは75馬力2基で150馬力、1サイクルは無負荷で約40秒になる。同マシンの特徴はダブルクランプ方式を採用しているところにある。投入材料は、切断部に送り込まれると、まず第一クランプで押さえられ、次にサイドプレスシリンダで、第二クランプ下部まで、横押し圧縮される。その後、第二クランプで再び押えプレスが行われ材料はその状態で押えられたまま切断される。同機はこのダブルクランプ機構のほかに、サイドプレスを行わず、第一、第二クランプが同時に材料を押える従来のクランプ機構も備わっており、投入材料に応じてこのクランプ方式が選択出来るようになっている。
後継者出来て設備導入
吉田商店は、現社長の父親が、昭和30年代半ばに現工場の隣で創業、昭和40年代から現社長が事業に参加、15年前から第一線に立っている。従業員は7名、月間扱い高は1000トンであるが、この新鋭機導入にともない、1500トンにするのが、当面の目標で、現在の納入先は鹿島にあるトーア・スチールが中心であるが、関東スチールまで走っている。カープレスは船積みしており、扱い商社は大丸産業。ヤード規模は13000平方米(約4千坪)とたっぷりあって、660平方米(約200坪)のプレス工場建屋があり、ここに手塚興産製ワンコロプレス機が設置されている。したがって、今回の稲垣製ダブルクランブシャーは屋外地上設置となつており材料投入は、新キャタピラー三菱製グラブ付き油圧ショベルを使用、製品積込みは、日立建機マグネ付油圧ショベルと二段構え。今回のシャー導入については、周辺他社はすべてギロチンを所有しており、したがって設備をつけることは、今後ともこの商売を続けるかどうか、ギリギリの選択を迫られていたが、息子さん2人が、商売を継いで行く気になってくれたことが、大きく影響しているようだ。吉田社長は他社ヤードの各種マシンを見て歩き、稲垣製作所に白羽の矢を立てたが、とりわけダブルクランプ方式を採用している点、気に入ったとされる。したがって今回の選択は間違っていなかったと吉田社長は語り、長男の康之氏も「切れ味は抜群」と太鼓判を押している。
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