東京都関口商店 リプレース800tギロ稼動
東京都内の優良スクラップディーラー関口商店(本社・板橋区東坂下1丁目14番9号、関口一英社長)は昨年12月、かねて同社本店工場内にある老朽化した切断処理機の更新に着手していたが、このたび工事を無事終了し、新たに設置されたギロチンシャー(切断能力800トン、稲垣製作所製)本格的な稼動体制に入った。機械本体、付帯設備を含む総工費は約8千万円。同社は今回の設備投資で、処理能力の増強と生産性の向上を目指し、経営基盤の強化を押し進めていく方針だ。北関東で大型電炉工場本格稼動するなど、鉄スクラップ業界が大きく変貌しつつある現在、同社の設備更新が持つ意義に迫ってみた。
稲垣Wクランプシャー設置
昭和26年創業の関口商店は、国道17号線(旧中山道)が走る板橋区志村坂下地区に本社と営業所を展開する城北地区有数のスクラップディーラー。700坪はある同社の本社工場を訪れると、昨年11月末にテストランを終えたばかりの真新しいギロチンシャーが視界に飛び込んでくる。同社にとつて、昭和58年の設備投資以来の本格的な処理機導入だ。「これまで本社工場はプレス加工専門で、切断処理は営業所で作業を行っていました。そのため納入する工場も、持ち込む母材によって違うわけです。しかしプレス専門の本社工場にギロチン材が持ち込まれる場合も多く、そのような場合は、わざわざ営業所に横持ちをかけていました。このような無駄な手間を省くためにも、本社の方にギロチンシャーを設置しなければならなかったわけです」と関口社長は処理機導入の背景を語る。機種選定では、首都圏のスクラップ加工業者が第一条件に挙げる「静かで場所を取らない」ということがポイントになり、稲垣製作所のダブルクランプシャー・SPS800T型に決定したようだ。5400mm(H)×5200mm(W)×9500mm(L)というコンパクトなボディーサイズに、主動力モーター・75kw2基のシリンダーユニットを合わせ持つ新鋭切断機は、切断圧力800トン。処理スピード(一工程)は無負荷で約35秒となる。切断ブレードの刃幅は2000mm。投入ボックスは2000mm(W)×800mm(H)×6300mm(L)の設定だ。材料送り装置は油圧モーターによるチェーン駆動方式を採用している。
東京という環境を追い風に投資
都市部のユーザーに的を絞った同機は従来どおり、振動・騒音対策に重点を置いた設計だ。機械本体には防振装置が施されており、高いレベルで振動を解消することに成功している。油圧ユニットは吸音材を内張りした専用のボックスケースに収納され、大きな防音効果を生み出し、隣接する住宅など、周囲の生活環境に対する負荷を軽減している。また、2本の押えシリンダーとサイドからの幅寄シリンダーを効果的に作動させる切断工程は、嵩比重の高い処理を実現するダブルクランプ方式を採用することで、評価の高い加工を可能にしている。「スクラップの扱い量は、バブル当時のピークである月間2000トンから、現在は月間1500トン程度まで落ちています。でも設備更新をしたからといってピークの数字を追いかけることは考えていません。扱い量は簡単に増えるものではないので、時間をかけ徐々に増えればそれで由としたい。東京はすでに、無理な営業をかけて競争したところで、思うように荷物が集まる地区ではなくなりましたからね」と関口社長は笑顔で語る。 世界一高い地価と人件費、周辺住宅へ対する配慮、悪名高き道路事情など、東京都心部で鉄スクラップ処理業を営むことは一見すると条件的に不利な状況ばかりが目に付く。だが、バブル崩壊以降、減少したスクラップ発生、低迷を続ける市況、手狭な工場といった環境が、都心部の経営者たちを収益率の改善へと足早に向かわせている。関連設備投資の堅調さなど良好な兆しも現れ出した。関口商店の設備投資はこのような時流に沿ったものといえよう。かつて逆風だった東京という特殊な環境はいま、追い風に変わろうとしている。
|